エレメント115の謎 ・・・・・・・・ 物質内の相対論効果について
2023年 5/12
1. 電子軌道の収縮効果:
物質原子内の電子の相対論効果は、理論化学の専門家の間では40年以上も前から話題になっていたが、広く認識されるようになったのは比較的最近である。
物質原子内の 軌道電子は、(スピンと異なり、)古典論のような空間の広がりの中に定義され、速度を持っている。そのため、相対論効果に従って、質量も、軌道も、時間の進み方も変わってくる。 特に、重原子の s、p軌道の電子は速度が速く、重く、軌道が収縮し、物理・化学的物性に多くの影響を与えることが、最近の研究で知られてきた。
ここで、簡略化のために、原子核の周りを電子が円運動をしているというボーアのモデルを用いる。
電子の質量: m、 原子核の電荷(原子番号): Z、 プランク定数 h、 真空の誘電率:
ε0、 光速: c、 主量子数: n (K殻: 1、L殻: 2、 M殻: 3、・・・) とおくと、エネルギーと 軌道半径は、
という不連続な値を取り、 速度 vn は、
となる。
たとえば、水素原子の軌道電子の速度は、 n=1、 Z=1より、 v=(1/137)c で、光速の0.73%、秒速2200km、 m ≒ m0 となる。
一方、重い原子である 金(Au、原子番号79) では、最も内側の 1s 軌道では、 n=1、 Z=79 より、 v=0.58 c で、 光速の 58%になり、 質量は m = 1/(1−(v/c)2)1/2)m0 = 1.2m0 にもなる。 ゆえに、この軌道半径 rn の非相対論のものとの比は、 (1/1.2m0) / (1/m0) = 0.89 となり、 19%も 収縮し、 軌道エネルギーも19%低くなっている。
原子核の近くにある 1s軌道が収縮すると、軌道の直交性(∫ψ(1s)・ψ(2s)dρ=0 等)を保つため、他の 2s、 3s、 4s ・・・軌道も同様に順次収縮し、p軌道も s軌道ほどではないが収縮する。 一方、d軌道、f 軌道 のすべての電子は、縮小したs軌道電子によって効果的に遮蔽され、軌道が拡大しエネルギー的に不安定になる。 このような相対論効果は、Z2 に比例して(重原子ほど)顕著になる。
1975年に計算された、ランタノイド〜重元素の 6s 軌道の 相対論効果による軌道収縮率は、
● 金の金色:
相対論効果により、金(Au、原子番号79、 [Xe] 4f145d106s1)の 5d 軌道と、6s 軌道が接近しているので、5d バンド→ 6s バンドのフェルミ準位の遷移エネルギー・ギャップ僞 が、非相対論のときよりも低くなり、可視光領域の青色に入り、この吸収が金を金色にしている。(橙色(青色の補色) + 金属光沢。)
一方、相対論効果の小さい 銀は、4d バンド→5s バンドの遷移エネルギーが大きく、可視光から外れた紫外領域の光を吸収するので、無色
(銀色) を呈する。(* 銀色の金属光沢は、伝導電子のプラズマによる光の全反射による)
● 水銀が常温で液体:
水銀 (Hg、[Xe]4f14 5d10 6s2)は、相対論効果によって安定化された 6s 電子に 2 つの電子を収容し、その上の準位(・・・ 基底状態では電子は入っていないが励起して自由電子が入りうる)の
6p 軌道も相対論効果によって収縮しているが、6s軌道ほどは収縮しないため、それらの軌道のエネルギー差は大きい。 そのため、水素(H、1s、結合性σ軌道に2つの電子を収容、H2分子を作る)と違って、ヘリウム(He、1s)が、反結合性σ*軌道にも2つの電子を収容しなければならず、また 混成に必要なp軌道もないので、Heは2原子分子を作らず、単原子分子として安定するように、 水銀の6s軌道も Hg−Hg 結合への寄与が少なく、Hg原子同士の結合は弱く、水銀の融点がZnやCdに比べて低く、常温で液体であることを説明する。(↓)
しかし、水銀イオン(T)、Hg+になると、相対論効果によるsd混成軌道ができて、反結合性軌道のエネルギーが低くなり、Hg+同士の共有結合となって、間にHg22+を挟んだ ‐Cl−‐(Hg+‐Hg+)‐Cl−‐ のような 安定な直線状分子を形成する。(Hg2Cl2、塩化水銀(T)、甘汞(かんこう)) (↓)
● タリウムと 水銀との合金(タリウム・アマルガム)は-60℃まで液体状態を保持できる(水銀:mp.
-38℃)ので、極寒地での気温を計る温度計に使用されている。 8.55 mol%のタリウムを含む水銀との合金は、-59℃の共融点。
● 鉛が柔らかいことも水銀と同様に説明できる。
● 第6族のクロム、モリブデンは、d 軌道の半閉殻構造が安定であるため クロム(Cr) [Ar]
3d5 4s1、 モリブデン(Mo) [Kr] 4d55s1 の電子配置を取る。 一方、タングステン(W、74、 [Xe] 4f14 5d4 6s2) は半閉殻構造を壊した (5d)4(6s)2 の電子配置を取る。これは相対論効果により、5d軌道と6s 軌道のエネルギー準位が近くなり、半閉殻構造を取るよりも
s 軌道に電子を2つ置く方が安定であるため。
* σ*: 反結合性軌道(antibonding orbital)は、電子によって占有された場合に2つの原子間の結合を弱め、分かれた原子の状態よりも分子のエネルギーを上昇させる分子軌道の一種。 このような軌道は核間の結合領域に1つ以上の節を持つ。 この軌道における電子の密度は結合領域の外側に集中し、核を互いに遠ざけ、2つの原子間に相互反発を生じさせる。
さらに詳しく述べると、2つの原子間の間隔が小さくなると、電子の波動関数が重なり合い始める。しかし、パウリの排他原理により、相互作用系において2つの電子は同じ量子状態を取ることはできない。 そのため、全波動関数(空間座標とスピン座標の積)は反対称でなければならないので、孤立した原子のそれぞれのエネルギー準位は、元の原子の準位よりもエネルギーが低い軌道(対称空間波動関数
σ、π、δなど)と より高い軌道(反対称空間波動関数 σ*、π*、δ*など)の対に属する2つの分子軌道へと分裂する。
たとえば、基底状態エネルギー準位である1sは、2つの分子軌道(σ、σ*)へと分裂する。 低い方の軌道は元の原子軌道よりもエネルギー的に低いため、より安定であり、2つのH原子がH2へと結合するのを促進する。(結合性軌道)。 高い方の軌道は元の原子軌道よりもエネルギー的に高く、より不安定であり、したがって結合を妨害する。(反結合性軌道)。
また、ベンゼン(C6H6)は、3つの結合性π軌道と 3つの反結合性π*軌道を有する。 ベンゼン環の6つの炭素原子は、ベンゼンのπ系へそれぞれ1個の電子を供与しているため、6つのπ電子が存在し、それらがエネルギーの低い方から順に、3つのπ分子軌道(結合性π軌道)を満たしていく。
(** 福井謙一は、ロアルド・ホフマンと、化学反応過程の分子軌道についての理論的研究によって1981年のノーベル化学賞を分け合った。)
(参考) 混成軌道、 原子の電子配置表
2. イオンの価数:
たとえば、
@ 銅(Cu)、1価の銅イオン(Cu+)、2価の銅イオン(Cu2+)、の電子配置は、それぞれ、 [Ar] (3d)10 (4s)1 、 [Ar] (3d)10 、 [Ar] (3d)9。 しかし、銅の3d軌道は銀の4d軌道に比べて原子核に近く軌道が小さいので10個の3d電子で閉殻になると電子間反発が閉殻の安定化効果を上回る。 そのため、(3d)9のCu2+のほうが安定。
A 有効核電荷(Cu 5.9、 Ag 8、 Au 11)は銅が銀よりも小さいので、銀に比べて銅のほうが高原子価の陽イオンになりやすい。
* 元素の有効核電荷は、核電荷に対する電子の遮蔽性が不十分なうちは、周期表の右側の元素ほど、また同族では下の元素ほど大きくなる傾向がある。 クロム、マンガンなどの周期表の左側の遷移金属は3価以上のイオンになるが、銅など、周期表の右側の遷移金属では3価以上のイオンになりにくい。
第4周期第3族から、 Sc 4.6、 Ti 4.8、 V 5、 Cr 5.1、 Mn 5.3、 Fe 5.4、 Co 5.6、 Ni 5.7、 Cu 5.9、 Zn 6
一方、重元素になると、
B 金(Au、原子番号79、電子配置 [Xe] 4f145d106s1)は、相対論効果により、s軌道は収縮し、s電子による核電荷の遮蔽性が強くなるためにd軌道は膨張して不安定になり、5d電子はイオン化しやすくなり、1価よりも3価の Au3+のほうが安定なイオンとなる。
また、6s軌道が安定化することでイオン化エネルギーの増大に寄与し、さらに、その上の6p軌道とのエネルギー差が大きいことから、金が銀よりも化学的に不活性であることがわかる。
Cu | Ag | Au | |
第1イオン化エネルギー(kJ / mol) | 746 | 731 (7.576eV) | 890 (9.226eV) |
第2イオン化エネルギー(kJ / mol) | 1958 | 2074 | 1980 (20.52eV) |
電子親和力 (kJ / mol) | 118 | 126 | 223 |
金属半径 (pm) | 128 | 145 | 144 |
cf. 白金(Pt、78) [Xe] 4f14 5d9 6s1、酸化数 +6、5、4、3、2、1、−1、−2、 水銀(Hg、80) [Xe]4f14 5d10 6s2、 +1、+2、 タリウム(Tl、81) [Xe] 4f14 5d10 6s2 6p1、 +1、(+3)、 鉛(Pb、82) [Xe] 4f14 5d10 6s2 6p2、 +2、+4
● 不活性電子対効果:
重原子の結合価(酸化数)は同族の軽原子と比べて 2 小さくなることがある。 第6周期以降の 第13族〜17族にかけて、6s軌道の2個の電子が不活性化する効果で、重原子化合物において、価電子の s 軌道が安定化され、s 電子を取り除くためのイオン化エネルギーが高くなっているためと考えられる。
6s電子対は、光速に近い速度で動いているので、内部に貫入して、準閉殻を形成している。
13族: タリウム(Tl、81、[Xe] 4f14 5d10 6s2 6p1) 最安定のイオン Tl+(+1価)、 14族: 鉛(Pb、82、[Xe] 4f14 5d10 6s2 6p2) Pb+2(+2価)、 15族: ビスマス(Bi、83、[Xe] 4f14 5d10 6s2 6p3) Bi+3(+3価) となり、 それぞれの族の、 +3価、+4価、+5価 にはなりにくい。
・・・・ タリウムイオン(Tl+)の毒性は、生体内のカリウムイオン(K+)に成りすますことによって引き起こされ、元をたどれば、相対論効果が原因である(?)
ex) 第4周期: AsCl3 3価(=5−2)で安定、 SeO4 4価(6−2)、 第5周期: In2O(T)、
In2O3(V)、 SnO(U、暗紫色)、 SnO2(W)、 SbCl3(V)、 SbCl5(X)、 第6周期: TlNO3(T)、 PbO(U)、
(PbO2(W))、 Bi2O3(V)、 (Po4+)
B | Al | Ga | In | Tl | |
---|---|---|---|---|---|
第一 | 800 | 577 | 578 | 558 | 589 |
第二 | 2427 | 1816 | 1979 | 1820 | 1971 |
第三 | 3659 | 2744 | 2963 | 2704 | 2878 |
第二 + 第三 | 6086 | 4560 | 4942 | 4524 | 4849 |
* モル当たりのエネルギーなので、原子半径が大きくなると減少する。 しかし、第2+第3は、Ga以降で予想より高めの数値。
* 第7周期に至っては、 プニクトゲンでは モスコビウム(Mc、115、[Rn] 5f14 6d10 7s2 7p3(推定))があるが、(計算によると)さらに7p軌道が分裂して、・・・7s2 7p1/22・7p3/21 であり、2個の7s電子と 2個の7p電子は それぞれ不活性電子対となって準閉殻に閉じ込められ、Tl
と同様に、+1価(第1イオン化エネルギー 5.58eV)になると予想されている。
最も外側を回る1個の電子の質量と速度は、水素様原子のモデル(準閉殻を一点とした核を回る、一電子系(=水素原子)のシュレディンガー方程式)で近似計算すると、
モスコビウム(Mc) me = 1.82 me0、 v/c = 1−me02/me2 = 0.698 で、光速の7割程度で走っている。
cf. 同じプニクトゲンで、 Bi: me = 1.25 me0、 v/c = 0.36、 Sb: me = 1.077 me0、 v/c = 0.138
水素様フレロビウム・イオン(Fl113+)の電子は非常に速く動くため、相対論効果のためその質量は電子の静止質量の1.79倍になると予測されている。これに対して、水素様鉛と スズの電子質量は、静止質量のそれぞれ1.25倍と
1.073倍。
3. ビスマスの反磁性 と ディラック電子系:
ビスマスや 熱分解カーボンの”巨大反磁性”(”巨大”と言っても 強磁性のレベルに比べると僅少。 また、マイスナー効果よりも低い。)は、1778年にAnton
Brugmansが、磁石を近づけると反発する奇妙な現象として、発見した。 軌道電子が弱い反磁性を表す現象は、ラーモア反磁性として普遍的であるが、ビスマスの反磁性は2桁も大きいので、長きに渡って固体物理学の謎とされてきた。
磁化率 χm(×10-4) Bi: −1.66、 C(ダイヤモンド): −0.21、 C(グラファイト): −0.16、 C(熱分解グラファイト、垂直方向): −4.0、 水: −0.091
ビスマスにおいて古くから巨大な反磁性が観測されることが知られていたが、フェルミエネルギーでの状態密度がゼロであることから、それまでの単一バンド近似では説明がつかなかった。
理論的には、50年も前から、相対論的な波動関数であるディラック電子系におけるバンド間の混成効果が、巨大な軌道反磁性を与えることが示されていた。 この現象が線形分散の場合に顕著となる「バンド間磁場効果」による巨大軌道反磁性で、フェルミエネルギーEF よりずっと深いところにある電子も反磁性電流を担うことが明らかになった。
このバンド間の混成効果は、近年発見されたいくつかの巨大反磁性物質(三次元ディラック電子系である Bi、Sr3PbO、単層グラフェン、[Pd(dddt)2]の超高圧相、など)の、「ディラック電子」の「軌道磁性」だけを 「スピン磁性」と区別して観測することにより、軌道成分が理論計算による値と一致することが分かった。(↓ 赤で示された軌道成分と
青のスピン成分の分離。 正孔ドープ試料の核磁気共鳴におけるナイトシフト: 伝導体における共鳴周波数と絶縁体における共鳴周波数との差(%)、= 伝導電子(スピン、軌道)による核スピンに与える相互作用の程度) すなわち、ディラック電子の巨大な反磁性が、相対論的に収縮した軌道の混成効果から生じていること(=「巨大な軌道反磁性」)が証明された。(by.東大理学研・物理、2021 4)
* 軌道反磁性(ラーモア反磁性)はすべての物質に存在するが、一般に非常に小さい。 スピン磁化は、正の値(常磁性)になる。
* ディラック電子系: 固体中電子の運動は電子分散で記述されるが、波数の1次の関数として励起エネルギーを表現できる二つの分散がX字状に交差する(エネルギーギャップがゼロの場合)、あるいは近似的に、それに漸近する双曲線関数に従う(小さいエネルギーギャップがある場合)電子状態を持つ物質をも含めて、両方とも「ディラック電子系」という。
ディラック電子系の電磁応答は、相対論的量子力学であるディラック方程式で記述できる。
* 相対論的ディラック電子: 通常の非相対論的シュレーディンガー方程式ではなく、相対論的量子力学におけるディラック方程式に従うため、通常の金属とは違う奇妙な振る舞いを示す。 ディラック方程式は、相対論的量子力学の基礎方程式であり、粒子が光速に近い速さで運動し、相対論効果が無視できなくなる高エネルギー領域において有効である。
(参考) 3. ディラック方程式とスピン:
グラファイトから単分子層をはく離した、単層グラフェンは、線形のバンド分散が一点で交差する特異な電子状態(ディラック分散)を示す。 このような電子状態を示す物質中では、電子が高速で移動することが可能なため、現在、世界中でディラック分散を持つ物質の探索が行われている。(by.理化学研)
単層グラフェンのフェルミ準位付近の電子状態は、質量ゼロの粒子であるニュートリノと同じ Weyl 方程式で記述される。 この方程式はディラック方程式で静止質量をゼロにした場合に相当するため,ディラック・フェルミオンとも呼ばれる。
相対性理論によれば光速 c に近い速度で運動する運動量 p の粒子のエネルギーは
E =±√( m2c4+c2p2) で与えられるが、この式で静止質量 m をゼロにすると、光と同じ分散関係 E = c |p| を得る。 これはニュートリノの分散関係でもある。
グラフェンは特異な伝導現象を示すことが期待されている。(ゼロ磁場での伝導率、強磁場での対角伝導率、ホール伝導率、動的な伝導率、伝導率に対する量子補正
など)
常圧では絶縁体の [Pd(dddt)2]の結晶に、約12万気圧という高い圧力をかけると、電流が流れるようになり、その電気抵抗が温度に依存しないことが発見された。このような振る舞いは「質量のないディラック電子」系の特徴であることが知られている。
(参考) 巨大軌道反磁性 質量の無いディラック電子系
さらに、2022年になって、常圧でディラック電子系が実現している物が発見された。 α‐BETS分子層(絶縁層 I3−を間に挟む α‐(BETS)2I3)の測定で、 50K以上で、量子抵抗標準値を保ったまま温度変化せず(↓A)、伝導層に平行に磁場を加えたときの磁化率はほぼ温度に比例し(↓Bのスピン常磁性(>0))、一方、伝導層に垂直方向の磁化率は極端に抑制される。 これは、垂直方向にだけ負符号の磁化率成分である巨大な軌道反磁性(↓Bの軌道反磁性(<0))が存在するためで、観測された反磁性は50K以上で温度に反比例し、温度に依存するので、まさに ディラック電子系である。 (cf. ディラック電子系以外の反磁性では温度に依存しない。)
この温度を振った電磁応答の結果から、ゼロギャップ・ディラック電子分散関係と光の分散関係が同等である、すなわち、特殊相対性理論が導く時間と空間の対称性が現われることが導かれた。
真空中の光は全ての方向に常に唯一の速度で進行するため、進んだ距離は光速度と時間の積となり、円錐面上にしか存在しない。これを「光円錐」という。(↓左B) 光は電磁波の一つであるため、運動は波の方程式で記述できる。波は振動数(エネルギー)と波数で記述され、2量の関係を分散関係という。光の場合、振動数は光速度と波数の積となり、質量ゼロのディラック電子系の電子分散と等価となる。
これらの物質は、グラフェンやトポロジカル絶縁体の表面状態のようなフィルム形状の物質(グラフェンでは、ディラック電子特有の巨大な軌道反磁性や磁気物性の測定が困難)ではなく、分子性固体の単結晶であり、巨大熱電応答などの新機能も理論的に予言されており、デバイスの省エネルギー化などへの応用も期待できるという。(理化学研、2022
1)
(参考) 分子固体における大きな反磁性
4. 核図表の 安定の島:
1972年の時点では、島の付近にある298Fl(114、フレロビウム、N=184)の半減期は約1年であり、最も長い294Ds(110、ダームスタチウム、N=184)の半減期は、232Th(90、トリウム)に匹敵する1010年と予測された。
魔法数: 陽子数vs中性子数の核図表の超ウラン重元素の「大きな安定の島」は、陽子と中性子の「魔法」数、Z = 114 と、N = 184 の近くで、比較的安定した元素の範囲が見つかるといわれる。 魔法数は、陽子と中性子が2、8、20、28、50、82個の場合とされ、特に、ヘリウム(He)4、酸素(O)16、カルシウム(Ca)48、鉛(Pb)208等の陽子数と中性子数がともに魔法数の原子核は「二重魔法数」と呼ばれ、崩壊に対して非常に安定といわれている。
298Flは二重魔法数であると考えられ、アルファ崩壊半減期は約17日であると予測されている。
鉛の次に来る「二重魔法数」の元素は、原子番号114のフレロビウム・298Fl となるが、現在のところ、十分安定な領域に入る 中性子の多い超重元素の合成はできていなく、せいぜい 289Fl(114、フレロビウム) の 半減期2.6秒、 290Mc(115、モスコビウム) の 0.8秒 といった程度である。
この、中性子数の十分多い核子の合成は困難で、(298−114=)184個の中性子となるターゲットと安定な発射原子核の組合せが知られておらず、また半減期14秒の50Ca等の放射性発射原子核を質を保ったまま強くぶつけることができないため、現時点では不可能である。 中性子の多いノーベリウム(102、No)やシーボーギウム(106、Sg)の原子核の合成が最も可能性が高いと考えられている。
一つには、250Cm、249Bk、251Cf、254Es等の、より重いターゲットを48Caと融合させて、299Uue、295Ts、295Lv の崩壊生成物として、291Mc(115、モスコビウム、290Mc で0.8秒)や291Fl (114、フレロビウム、289Fl で2.6秒)、291Cn、293Cn(112、コペルニシウム、281、284Cn で97mS)等、を合成する方法がある。
もう一つは、制御された核爆発を用いて高中性子流を発生させ、そのような同位体を大量に作る方法であり、天然で最初にアクチノイドが形成された r過程(=天体などで、鉄より重い元素の多くを爆発的に合成する過程)を模倣したもので、258-260Fm(100、フェルミウム)と 質量数275(原子番号104〜108)の不安定性ギャップをバイパスすることができる。
(物理・化学的性質)
● フレロビウム 114Fl: 第14族で、鉛の次の周期(7周期目)に位置し、電子配置は、 [Rn]
5 f14 6 d10 7 s2 7 p2 と予想され、7s2 7p2 の4つの荷電子を持つが、 重元素の電子は光速に近い速度で動くため、相対論効果によりスピン軌道相互作用が現れる。 コンピューター化学の計算より、7p の2個の軌道電子は安定化されて不活性電子対効果が表れ、さらに 7p軌道角運動量が安定性が高い1/2と安定性が低い3/2の小軌道に分裂し、7s27p21/2 が安定化して中心に引っ張られ、希ガスのようにほぼ完全な閉殻となり、貴金属となる。 第1イオン化エネルギーは 8.539eV で、第14族元素の中で最も高い。(cf.
鉛 7.42eV、 鉛(第2)15.0、 銀 7.58eV、 金 9.226eV、金(第2)20.52eV) 固体状態では、22g/cm3または14 g/cm3の密度の金属になると予測される。
[Rn] 5 f14 6 d10 7 s2 7p21/2 (準閉殻)
水素様(よう)フレロビウム・イオン(Fl113+)の電子は非常に速く動くため、相対論効果のためその質量は電子の静止質量の1.79倍(v=0.829c)になると予測されている。これに対して、水素様鉛と スズの電子質量は、静止質量のそれぞれ1.25倍(v=0.6c)と
1.073倍(v=0.36c)。
最近の実験では、フレロビウムの擬閉殻配置が弱い金属結合の原因となり、フレロビウムの沸点は約−60℃で、室温で気体(気体状金属)であると予想されている。
● モスコビウム 115Mc: 現在のところ、最も長寿命なモスコビウム290でも半減期は800ミリ秒で、α崩壊(10.3MeV)。 第15族で、ビスマスの次の周期に位置し、電子配置は、 [Rn]
5f14 6d10 7s2 7p3(推定)であるが、フレロビウムと同様に相対論効果により、さらに7p軌道が分裂して、
[Rn] 5 f14 6 d10 7 s2 7p21/2 ・7p13/2 (準閉殻 + 1個の電子)
となって、・・・ 7 s2 7p21/2 までは閉殻になり、7p3/2 の1個の電子が価電子となり、イオンは Tl+(タリウムイオン、 タリウム 81Tl: [Xe]4f145d10 6s2・6p1)のように +1価の陽イオンとなると予想される。 第1イオン化エネルギーは 5.58eVで、反応性の高い金属であり、標準酸化還元電位は、Mc+/Mcに対して−1.5 V。 密度は、約13.5 g/cm3。
cf. 同じ15族のビスマス 83Bi は、 [Xe]4f145d10 6s2・6p3 のように、+3価のイオンとなる。(アンチモン、リンなどの+5価にはなりにくい。)
モスコビウムとニホニウム(113Nh、[Rn] 5f14 6d10 7s2 7p1)は、どちらも準閉殻の外に1つの電子を持ち、どちらも融点400℃、沸点1100℃程度になると予想されている。
水素様モスコビウム・イオン(Mc114+)の電子の質量は、静止質量の1.82倍 (m=m0(1/√(1−v2/c2))、v=0.836 c) cf. 水素様ビスマス 1.25倍(v=0.6c)、水素様アンチモン
1.077倍(v=0.37c)。
5. 負の有効質量を持つ流体の 実験: Wired.jp
半導体内の 電子と 正孔の「有効質量」(me*、 mh*)**は、便宜的に定義された、架空の、理論上のものであり、(正孔も、陽電子も、)必ず「正の質量」の値で扱われ、本来、実際的なマクロの現象に表れる 「負の質量」とはなり得ないものである。 デイラックは、真空は、すべての負エネルギー状態が通常の電子によって占められている状態であると解釈し、負エネルギーの電子が正エネルギー状態に移ったあとに残る空孔は、後に発見された陽電子のことであり、場の理論では、正孔=陽電子と解釈し直すことによって、ディラック方程式で出てくる「負エネルギー状態」の概念は不要になるとした。
(参照) 3. ディラック方程式とスピン:
しかしながら、ごく最近になって、「負の有効質量」が実際に存在するかのように振る舞う現象が報告されている。
2017年6/26、米ワシントン州立大学の研究者らは、ルビジウム原子を絶対零度付近にまで冷却し、ラマンレーザーでスピン軌道相互作用を引き起こすことで、「負の有効質量」を持つ流体の生成に成功したという。(by.マイケル・フォーブス准教授・物理学)
ルビジウム原子を絶対零度付近まで冷却し、ボーズ・アインシュタイン凝縮(*)の状態を作り出した。常温では自由に飛び回ったり振動したりする原子の集団は、極低温になると一斉に凝縮して流体となり、量子力学の法則に従って集団で波としてふるまうようになる。 ミクロの世界の不可思議なふるまいが、超流動、超電導などのような巨視的スケールで出現する。
この研究所では、低温におけるリチウムについても研究し、「超新星爆発の超高密度残骸である中性子星の特性をモデル化するのに利用できる。物理的法則の不変性により、適切な条件下におけるリチウム原子の特性は、中性子星の地殻中性子の性質にほぼ直接的に関連する。」と述べている。
* ボーズ・アインシュタイン凝縮: アインシュタインが1925年の論文の中で予言。 スピンが整数値の「ボース粒子」はボース統計にしたがい、同種粒子は位置以外の区別がなく、複数の粒子が同じエネルギー状態をとりうる。(cf. 電子などの半整数スピン(1/2、3/2、5/2、・・・)の「フェルミ粒子」は、一つの量子状態を重複することはない。= パウリの排他律) 極低温で原子間距離がド・ブロイ波長に近づくと、各原子の波動関数が重なり合い、最低エネルギーの状態を取った時の状態で、一つの波動関数で表される巨視的な量子状態であり、コヒーレントに振る舞う。 光子(スピン0)、フォノンやマグノンのような準粒子、超伝導に関与するクーパー対(電子2個でボソン)もボース=アインシュタイン統計に従う。 液体ヘリウム、すべての中間子、および、未発見ではあるが 重力を媒介するゲージ粒子の重力子 (グラビトン) がスピン2、質量を担うヒッグス粒子はスピン0のボース粒子、と考えられている。
** 有効質量: バンド構造の図(分散関係)における“曲率”で、電子のバンドのエネルギーE(k)を波数kで2回微分したもの。 有効質量が正とはバンドが正の曲率をもつこと、つまり下に凸であり、有効質量が負とは上に凸。 結晶中の電子の運動は、有効質量に書き換えるだけで、真空中に1個だけ電子がある古典的なニュートンの式 F = qE = m*a に従うように、(近似的に)記述できる。(q:電子の電荷、m*:電子・空孔の有効質量
>0、a:加速度) ex) InAs について、me* = 0.024m0, mh* = 0.41m0(h、重い正孔)、 0.026m0(l、軽い正孔)
● (実験)
この極低温の条件で、本来反発しあうルビジウム原子を、スピン軌道相互作用を引き起こすラマンレーザーを使用して狭いスペースに押し込め、次に、そのレーザーをオフにしてこれらの原子を解放し、拡張させた。
・ ルビジウムのボース・アインシュタイン凝縮の作り方(=「過冷却ルビジウム」ともいう。液体や固体にならず気体(=超流体)のまま。): レーザー冷却とトラップの原理(京大)
ルビジウム原子を絶対零度に近づけ、動かない状態にすると、波動という量子の性質が現れる。 これに数方向からのレーザー光を当て、原子の動きを遅くする(=「レーザー冷却」、温度100nK(0.1μK)の気体となる)。また、磁気光学トラップを用いて重力で流体が溢れるのを防ぐ。
この ボース・アインシュタイン凝縮して押し込められた過冷却ルビジウムは、原子間の相互作用を無視できる超流体になっていて、全体で一つの量子波の振る舞いをする。 ここにラマンレーザーを当てると、ルビジウム本来の反発しあう性質による反発力が
減少して、ついには「負の慣性質量」であるような運動をするようになる。
最初はルビジウムの有効質量は「正」であり、原子同士の反発によるルビジウム原子の超微細構造の状態を変換したり戻したりして、外向きの力で流体に運動量を伝達することにより、原子の雲を拡張させる。 しかし、原子の雲の右側が十分な速度で動き始めると、その有効質量は『負』になる。この時点で、原子の反発による外向きの力は、加速するよりも、むしろ減速し始め、流体は突然立ち止まって積み重なる。( ・・・ 『自己束縛』現象)
この流体の「自己束縛」は、右進行部分に位置する「負の質量」領域にある流体の外向きの圧力が、逆方向であるその中心に向かって加速されることで起こる。(慣性質量が負に変わる!)
● (シミュレーション)
また、現状ではシミュレーションによる確認レベルだが、別の興味深い特性は、質量が負になるにつれ、流体が不安定になり、大きく振動し始め、さらにスピードが上がり、負の質量の領域に達すると、流体は後方に突然はね上がって、この不安定性のために激しく泡立つようになる。 最終的に、液体が十分な速度で動くと再び静穏になる、ということである。
フォーブズ氏は、実験は、注意深く並進不変性(対称系で運動量を保存)を保ちながら ルビジウムが流体に運動量を伝達しているので、この効果が他の複雑な要因からではなく、単純に『負の有効質量』から生じていることを証明している、と言う。
6. エレメント115の謎の解明:
1989年11/10、ロバート・ラザー氏が、 TV番組(チャンネルエイト)で、彼が勤める「エリア51」の実態を暴露した話を、後に日本テレビが取材した情報によると、次のようである。 1988年当時、彼はエリア51にいて、UFOの動力源の研究をしていた。
9つの格納庫に一機ずつ 宇宙人が提供したUFO機(高さ5m、直径10m)が納まっていて、原子番号115の物質(エレメント115)を用い(223gで20−30年飛ぶという)、中央の反物質反応炉(リアクター)から重力波を作って機全体を覆い、下の3つの重力増幅器をコントロールすることによって自由自在に飛行する、という話であった。
彼の話が本当だとすると、この不安定で強力な放射線を発する モスコビウム(?)を、安全に格納して、重力場の制御に用いていたことになる。反物質リアクターと呼ばれる物で、この技術も理論も地球上には存在しない物質だそうである。
→ ネフィリムの謎 5.エリア51の状況 最近(2021年)のインタビュー
最近のインタビューによると、エレメント115は、2003年にロシアで初めて合成が試みられた0.8秒で崩壊するような、必ずしも
文字通り モスコビウム(115、289Mc)ではなく、その付近の安定超重元素(291Mc、298Fl 等?)のことと 言い換えている。 確かに重い元素ほど、物質本来が持つ、相対論効果であるスピン‐軌道相互作用は強くなり、極低温でなくても、ボース粒子のマクロなコヒーレント状態となって「負の有効質量」が現れ、重力を担う重力子(グラビトン)、質量を担うヒッグス粒子にも影響を与える可能性が考えられる。
● 重力A波: (by.ラザー氏の最新インタビューより)
重力Bフィールドは、あらゆる形態の物質に固有のものである。 しかし、モスコビウムのような重い元素は、さらに加えて「重力A波」を伴っている。 この重力A波は、原子の周囲を越えて広がっていき、 これにより、元素自体の重力Aフィールドが確立される。
しかし、地球上に自然に存在する元素は、重畳している重力A場がその原子の周囲を越えて広がり アクセス可能になるのに十分な数の陽子と中性子を持っていない。 重力A波は原子の周囲を無限に超えて広がるが、アクセス可能であり、波長、振幅、および周波数を持っている。 重力A波にアクセスすると、他の電磁波を増幅する方法で増幅することができる。 次に、増幅された重力A波を目的地に集中させて、実際の宇宙旅行に不可欠な時空の歪みを引き起こすことができる。
この増幅された重力A波の力は計り知れない。 これだけの時空の歪みを引き起こす可能性のある唯一の自然発生の重力源はブラックホールだけである。
ただし、これらの物質が非常に作りにくいことは、5.で述べたとおりである。
もし”宇宙人” = 「ネフィリム」の生き残り がいて、地球外で (制御された核爆発を用いて)中性子の多い安定した超重元素を作ったとすれば、それは可能になると思われる。
因みに、エリア51に比較的近いロスアラモス国立研究所(ニューメキシコにある 米国の核兵器・原子力の中枢的研究施設、マンハッタン計画の中で原子爆弾の開発、広島・長崎の原爆もここで製造された)では、2000年の大火災、機密文書や核物質などの紛失事件が引き続いて起こり、2004年7月から業務停止の運営業務が、2006年6月から 各大学機関とともにベクテル社に委託されている。
2005年11/30には 少なくとも300kgの兵器級プルトニウム(=原爆の原料)が行方不明(核兵器50個分)となる事件が起こっている。(一部の原爆は、「人工地震」に用いられた。その証拠として放射能汚染(2)。)
この際、ネフィリムらから受け取った 「エレメント115」も、どこかへ運ばれた可能性がある。
もうすでに、この地球のどこかで、世の終わりの憤りの時に備えて、ネフィリムたちが与えた エレメント115を所有する「反キリスト」が、この軍事力を所有していると思われる。
§ 終末の憤りの時の事について:
「その馬は、ひょうよりも速く、日暮れの狼よりも敏しょうだ。その騎兵は遠くから来て、はね回り、鷲のように獲物を食おうと飛びかかる。」(ハバクク1:8)
・・・・・ 「ひょう」とは、ダニエル書7章6節から、3番目の獣 = 啓蒙・科学技術の時代
をあらわし、その一般的な技術力をはるかに超える”軍事力”が、反キリストによって3年半の世界支配に用いられる。
「(小羊が第一の封印を解いたとき、) 見よ。白い馬が出てきた。そして、それに乗っている者は、弓を手に持っており、また冠を与えられて、勝利の上に勝利を得ようとして出て行った。」(黙示録6:2)
・・・・・ これは、「白い馬」に乗る者、すなわち、終末の「反キリスト」が、最初は 世の支配者たちを攻撃するため、一見、正義の使者のように見える大々的な働きをすることが、述べられているが、これを喜んではいられない。 彼は、天下を取った後、一転して、「神」を名乗り、彼を拝まないキリスト者たちを大迫害するようになり、また 「にせ預言者」が大きなしるしをもって 反キリストを拝ませようとするので、惑わされないように注意しなければならない。 (cf. ドイツ経済を立て直したヒトラーのときは、「反ユダヤ」だった)
この世の支配者たちとは、米国の軍事・経済力=「エジプト」、 いわゆる ディープステイト(にせユダヤ、フリーメイソン、多国籍企業体などの総称) =「ツロ」 のことであり、それぞれ、 エゼキエル書29−32章、 26−28章に、バビロンの王、ネブカデネザル
(=終末の「反キリスト」)によって滅ぼされることが 書かれている。 このことの成就の時は近いと思われる。